共同通信は30日、自民党の生稲晃子参院議員(現外務政務官)が2022年8月15日の終戦の日に靖国神社を参拝したと誤報した問題に関する検証記事を配信した。国会議員らの参拝について取材協力していた他社の記者が見間違えたとみられ、その情報について裏付けを取らずに記事に盛り込んだとしている。
この問題では、生稲氏が政府代表として今年11月24日に参列した世界文化遺産「佐渡島(さど)の金山」の労働者追悼式に韓国政府関係者が参加を見送り、誤報が影響したと指摘された。共同通信は生稲氏や日韓関係者らに謝罪。政府は検証と再発防止を求めていた。
検証記事によると、共同通信は靖国神社に閣僚や議員らが参拝したかどうかを確認するため、複数の報道機関で現地取材を分担していた。22年8月15日午前、「稲田朋美、生稲議員入りました」との情報が、他社の記者からLINE(ライン)で共同通信を含む数社に共有された。
その報告を受けた担当デスクは生稲氏について知名度があるなどとして記事に盛り込むことを提案し、統括役の記者も同意して出稿した。情報の裏付けを取らないまま、他社情報をうのみにした。
韓国側が追悼式を欠席した問題を受け、共同通信は当時の取材経緯を調査。LINEでの報告に名前があった稲田氏に再取材すると「生稲氏と一緒に行っていない」と否定し、他の参拝議員も同様の見解を示した。当時の取材メモには生稲氏に確認取材したとの記載がなく、生稲氏が参拝を否定していることと併せ、参拝したとの報告は見間違えだったと判断した。
検証記事は「2年前の誤報が(日韓の)両国関係に一定の影響を与えたことは否めない」と結論。高橋直人編集局長は「『事実に基づく報道』というメディアの大原則をもう一度胸に刻み、信頼を取り戻すため、再発防止に全力で取り組みます」との談話を出した。