東大総長選考で有志が2回目の要望書 前の回答「説明になってない」
朝日新聞、配信
東京大学の新総長に選ばれ、記者会見に臨む藤垣裕子氏(右)と選考会議長の国谷裕子氏=2026年9月29日午前11時48分、東京都文京区、米田怜央撮影(朝日新聞)
東京大学の総長選考をめぐり、東大の教職員有志は27日、選考会議側に2回目の要望書となる「再質問書」を提出した。1回目の要望書に対する選考会議側の回答には、「説明になっていない」との声が多数寄せられたという。
再質問書では、知りたいことは「協議で誰が何を言ったかではなく、相応の手続きがあったかどうか、それがいつ、どの順序で行われたか、票がどう分かれたか」だとしている。
具体的には、意向投票で過半数の支持を得た人ではなく2位の候補を選んだ決め手▽総長就任までに選考会議は学内の疑問に答えるために何をするつもりか▽総合研究奨励会の不正についてどう扱ったか、などについて明確な説明を求めた。
教職員有志は1回目の要望書で、学内の投票結果をどう考慮したか、候補をどう検討して比較したのかなどの説明を要求。賛同者は500人を超えていた。これに対し、選考会議側は協議内容は「保秘事項」として、具体的な説明には至っていなかった。意向投票の結果をどう判断したかについては「各委員によって異なる」と回答していた。
教職員有志によると、1回目の回答を賛同者に共有して感想を募ったところ、158人から感想が寄せられ、うち7割が「説明になっていない」と答えた。多くは、会議としてどう判断したかが示されていないことを理由に挙げたという。
教職員有志は、「今回の問題を、大学に委ねられた大きな裁量と、それに伴う説明責任、大学が自らの判断を検証する力に関わる問題と捉えている」とし、2週間程度を目安に回答するよう求めた。(植松佳香)
【総長選考2026】教職員有志が追加の質問を提出 選出理由とプロセスの詳細な説明求める
東京大学新聞、2026年10月27日
10月27日、教職員有志が発起人一同の名義で再質問を総長選考・監察会議(選考会議)に提出した。併せて、監事にも検証についての要望書を提出した。(記事末尾に全文を掲載)
教職員有志の9人の発起人は、10月13日の質問に対する回答で分かった部分もあったが、選出者の決定理由が「各委員によって異なる」とし、選考会議としての判断が示されなかったと指摘。感想を寄せた賛同者の7割が「説明になっていない」と回答したとして、再び質問を提出した。発起人は文書中で「(保秘事項という制度がある以上、選考会議が公表できない議論があるのは当然だが)何が示されれば構成員は理解できるか、それを候補者に不利益を与えずに示す方法はあるか、を構成員の側から具体的にお伝えします」として質問を提示した。具体的な選考理由が示されないことで候補者に関する憶測を招いているとして、候補者に不利益を与えている現状についても指摘した。
質問は、①候補者の評価と選考理由に関する質問、②評価のもとになった事実と、その確認に関する質問、③8月18日の第2次候補者の決定時の選考会議の判断と、9月28日の総長予定者決定時の選考会議の判断との整合に関する質問、④協議と投票を経て、選考会議として次期総長予定者を決定するまでの過程に関する質問━━の4つ。10月13日の選考会議の回答に対して、賛同者のうち158人の感想を集め、それを参考にして論点を整理したという。
藤垣氏を選出した決め手の説明を要求
①候補者の評価と選考理由については、意向投票の結果に縛られない権限は、投票結果と異なる判断をした際に、十分な説明ができることと切り離せないと主張。「求められる総長像」を具体化した22の評価項目に沿う形で、藤垣次期総長予定者の強みと課題についての説明を求めた。さらに、「2000人以上の構成員の過半数が描く総長像よりも、十数人の選考会議が描く総長像が優先された」理由は何だったのか、「何が決め手だったのかを構成員は知りたい」と質問。今後の選考会議による追加の情報公開と、構成員との対話の予定を求めた。
工学系研究科関連法人の不祥事の扱いを質問
②評価のもとになった事実と、その確認については、ある委員が特定の候補者に不利な発言をした場合の取り扱いを質問。その発言につき、事実と委員の推測を区別し、推測にとどまる意見は選考の判断材料に含まない、などの取り決めがあったのか説明を求めた。特に面接や所信表明動画については、選考委員の否定的な発言があった時にその妥当性について十分な確認が行われたか、説明を求めた。
工学系研究科の関連法人の総合研究奨励会で、元役員が9000万円を横領した事案については、9月11日の東大の報告書中で、他の役員の個人の責任の認定はなく、汚職は構造上の問題に起因するとしていた。この事案については、東大が公表した資料以外に参照したものがあったのか、候補者の責任が問われたのか説明を求めた。
③8月18日の第2次候補者の決定時の選考会議の判断と、9月28日の総長予定者決定時の選考会議の判断との整合については、この間の変化を質問。新たに増えた判断材料があったのかどうかを質問した。また、第2次候補者の決定時の手順が8月上旬に改訂されたことについて、改訂内容とその理由を質問した。
選考委員の投票結果や、選考理由の決定プロセスの詳細を質問
④協議と投票を経て、選考会議として次期総長予定者を決定するまでの過程については、第2次候補者への絞り込みと、次期総長予定者への絞り込みのそれぞれにおいて、選考会議内で行われた投票の、得票数などの詳細を質問。票数は候補者の弱みに直接触れるものではなく、前回の選考の検証報告書でも、票数と議論の流れを掲載していたため、非公開にする理由は乏しいと指摘した。
さらに、意向投票の過半数を集めた候補者がいた場合に、意向投票と異なる決定をするために必要なものについて事前の合意があったかどうか、制度について質問した。
「求められる総長像」を具体化した22の評価項目については、選考会議として評価項目に沿った形で候補者の評価をまとめていたか質問。決定の前に選考会議としてまとめられた評価が存在したのか、公表された選考理由に書かれたそれぞれの内容は評価項目のどこに合致するのか質問した。
また、今回の選考に対し憶測で語られている事柄について選考会議自身に整理を求めたいとした上で、性別、所属部局、国際卓越研究大学の審査への影響や、総長が長らく文理交互に選出されていた慣行などについて、選考会議で発言があったり、判断に用いたかを質問した。
選考プロセスの検証と結果の公表を監事に要望
監事に対しては、①選考過程などについての記録、②選考過程が適切であったことを判断する基準━━の2点について確認を要望。再質問書によれば、監事は次期総長予定者が決定された第12回会議の進行が適正であったことを10月15日時点で確認したとされる。候補者の課題に言及することを避けつつ「内容そのものではなく確認した範囲と結果」を、新総長の任命の申し出の前に構成員に示すことを求めている。
①について、(1)候補者の評価理由についての記録の確認(2)候補者や専門家への事実の確認の有無および事実に対する委員の意見の妥当性(3)第2次候補決定時点での評価基準とそれ以後の議論における理由・情報の変化の確認(4)次期総長の決定に際する議論における投票の制度とその結果、および各投票間での意見交換の内容と、公表された理由の作成手順(5)候補者の選定および次期総長決定の手続きの公正性の確認━━を求めた。
②について、①の事項が適切かを検証する判断基準に関して、教職員有志は選考会議や東大の規定を元にして考えを示した。基準は(1)選考会議の内規に基づき選考会議としての評価がまとめられていること(2)国立大学法人法に基づき選考理由が公表されること(3)前回選考の検証を踏まえ、候補者に不利な情報の選考での扱い方や、候補者への提示と反論の機会を求めたこと(4)意向投票で過半数を得た者がいる場合、明確な意向が得られている」とした選考会議自身の整理と、それを覆す場合に必要な事項を選考会議が事前に決めていたこと(5)選出者が「求められる総長像」に合致していること━━とした。
今回の総長選考では、意向投票で2位の藤垣裕子教授(大学院総合文化研究科、前理事・副学長)が次期総長予定者に選ばれた。東大の教職員有志は10月13日、選考会議に対して総長選考に関する説明を求める文書を提出していた。併せて監事にも議事進行についての意見を求めていた。選考会議は13日付、監事は15日付で、それぞれ教職員有志に回答していた。
* * *
以下、実際に教職員有志発起人が提出した文書の抜粋を掲載します。
01_総長選考に関する再質問(抜粋)
2026年10月27日
東京大学総長選考・監察会議 御中
東京大学教職員有志発起人
10月13日付の要望に対し、同日付でご回答いただき、ありがとうございました。
私たちは当初、選考の理由が十分に説明されないまま憶測が広がることを懸念し、事実と判断の経緯を明らかにしていただきたいと考えていました。その後、賛同者の皆様や専門家との対話を重ねる中で、今回の問題を、貴会議に委ねられた大きな裁量と、それに伴う説明責任、そして大学が自らの判断を自分で検証する力に関わる問題として、より深く受け止めるようになっています。
ご回答から、協議の進め方や用いた資料について分かったことがありました。一方、賛同者に回答を共有して感想を集めたところ、感想を寄せた 158 名のうち 7 割が「説明になっていない」と答えました。その理由として最も多かったのは、会議としての判断が示されず、「各委員によって異なる」とされている点です。
本書は、賛同者から寄せられた感想と意見をもとに、発起人が論点を整理したものです。賛同者の名簿は添付しません。また、本書は特定の候補者を支持するものではありません。
同時に、貴会議が難しい立場にあることも十分理解しています。回答書は、協議の内容と面接の内容を保秘事項とされています。非公開を前提とした協議であれば、候補者の課題や弱みも率直に話し合われたはずで、その内容をそのまま示せば候補者に不利益が及びかねないことは、私たちも承知しています。そこで本書では、何が示されれば構成員は理解できるか、それを候補者に不利益を与えずに示す方法はあるか、を構成員の側から具体的にお伝えします。お尋ねするのは、協議で誰が何を言ったかではなく、相応の手続があったかどうか、それがいつ、どの順序で行われたか、票がどう分かれたか、です。
なお、10月20日には、文部科学省から総長と監事に対し、選考の経緯を検証するよう依頼がありました。検証は本来、大学が自律的に果たすべき責務であり、貴会議にはいずれ学内外に向けて選考の経緯を説明することが求められると私たちは考えています。本書がその整理の材料になれば幸いです。記録を見なければ確かめられない事柄は、同日付で監事に調査の項目としてお伝えしました。貴会議には、会議としてお答えになれる範囲のことをお願いしています。
1.候補者の評価と選考理由について
貴会議には、意向投票の結果に縛られずに総長予定者を決める権限が委ねられています。その権限は、構成員の多数の意向と異なる判断をしたときに、なぜそう判断したのかを構成員に説明できることと切り離せないものだと私たちは考えています。回答書への賛同者の感想(自由記述85件)を読み返すと、求められているのは、その説明であることがよく分かります。まず賛同者の言葉をもとにした論点について、三つお尋ねします。
(1)22の評価項目について、総長予定者の何を評価しましたか。
賛同者は次のように書いています。「選ばれた方が他の候補に比べてどの点を評価されたかについては、結局全くわかりませんでした」。「選考理由にあることは、ほぼ他の候補者にも当てはまるのではないだろうか」。「個々の委員の発言や秘匿すべき情報の全面開示を求めたいわけではありません。どの評価項目が最終的な判断を分けたのかを知りたい。」
回答書では、どの項目を重く見たかは各委員によって異なるとされています。そこで、公表された22の評価項目のうち協議で取り上げられたものについて、総長予定者について述べられた強みと、課題として話し合われた点を、文書でお示しください。関連する項目はまとめて記述いただいて構いません。協議で取り上げられなかった項目は、その旨をお示しください。
この一覧は、貴会議が総長予定者を選んだ理由を、貴会議自身の言葉で前向きに示す機会でもあると考えます。
(2)意向投票で2倍の票差がついた中で、2位の候補者を選んだ理由は何ですか。
賛同者の感想で最も多かったのは、「2000人以上の構成員の過半数が描く総長像よりも、十数人の選考会議が描く総長像が優先された理由を明確にすること」を求める声でした。意向投票を2回行い、1位の候補者が2位の候補者の2倍の票を得て過半数に達しました。これは貴会議が定めた手続による結果です。その上で2位の候補者を選んだ理由は何だったのか、一言で言えば何が決め手だったのかを、構成員は知りたいと考えています。
「総合的に判断した」という表現は選考理由と回答書にすでにありますが、それだけで構成員が納得することは難しいと感じています。決め手を一つに絞れない場合は、実際のところに即して主な理由をお示しください。協議と投票を経て会議として決定するまでの過程は、第4項でお尋ねします。
(3)総長予定者の任命の申出までの間に、貴会議は構成員に対してどのような説明や対話を行いますか。
賛同者からは、新しい総長のもとで大学を支えていくためにも、選考の理由と経緯を理解したいという声が多く寄せられています。ある賛同者は、このままでは「どなたが総長に就任される場合であっても構成員がその方を祝福のうちに迎えられる」ことが極めて難しい、と書いています。
監事による検証には相応の時間を要すると思いますが、その間にも総長就任に向けた手続は進みます。検証が終わるのを待つ間に、構成員の疑問に答えるために貴会議として何をするお考えか、いま説明できる事項の公表、構成員との対話の場、第12回会議の議事要旨の公表(学内限定を含む)など、取り組みとその時期をお示しください。議事要旨については前回もお願いしましたが、ご回答がありませんでした。
2.評価のもとになった事実と、その確認について
回答書では、候補者の評価・判断の材料に「協議における他の委員の考え方」が含まれること、総合研究奨励会に関する9月11日の報告について意見交換を行ったことをご説明いただきました。ここでは、協議の場に出た意見や印象のうち何を事実として扱い、それが確かかどうかをどう確かめたかを、手続があったかどうかの形でお尋ねします。まず一般の扱いを、次に具体の事案をお尋ねします。
(1)候補者に関する事実についての意見は、どのように扱われましたか。
回答書では、推薦書と面接以外に非公開の判断材料はないとされています。資料についてはそのとおりと受け止めます。お尋ねしたいのは資料ではなく、協議の中で委員が述べた意見の扱いです。回答書は「協議における他の委員の考え方」を判断材料の一つに挙げています。この点について、次のことをお尋ねします。候補者に不利な意見が述べられたとき、それが確かめられた事実なのか、委員の推測や伝聞(人間関係や将来の行動についての見立てなど)なのかを会議として区別し、選考の材料として扱うかどうかを決める手続はありましたか。推測にとどまる意見は材料にしないという取り決めはありましたか。なかった場合は、その旨を明らかにしてください。
令和2年度の総長選考過程検証報告書が問題にした「真偽の確認及び選考資料としての採否に関する議論」は、文書だけでなく、協議で述べられる意見にも同じく当てはまると私たちは考えています。
(2)面接や所信表明動画についての印象は、記録を見直して確かめられましたか。
ある委員が面接や動画について否定的な印象を述べたとき、それが他の委員の材料になる前に、面接の記録や動画を見直して確かめる手続があったかをお示しください。受け答えの態度や印象についての意見を評価に用いた場合は、どの評価項目との関係で用いたのか、別の受け取り方ができないかを当時検討したかをご説明ください。検討せず各委員の印象に委ねた場合は、その旨を明らかにしてください。
候補者本人に確かめる機会が8月の面接以後なかったことは、本項(3)のウのとおりです。5名の候補者について同じ評価項目と同じ手続で評価が行われたと理解しています。
(3)総合研究奨励会の事案は、どのように扱われましたか。
本項(1)でお尋ねした扱いが、この事案について実際にどうであったかをお尋ねします。私たちは次のように理解しています。
ア この事案について会議が用いた資料は、東京大学が公表した報告書のみである。
イ 報告書は、外部の弁護士・公認会計士を加えた検証の結論として、個人の責任を問う問題ではなく構造上の問題であるとしている。会議は、この結論を受け入れるかどうかを会議として決めていない。
ウ 候補者がこの事案について説明したのは、回答書の5にあるとおり8月14日の面接での1問に対するものであり、報告書の公表後に候補者に事実を確かめたり、説明の機会を設けたりすることはなかった。
エ この事案は協議の議題になったが、公表された選考理由には書かれていない。
違っている点があればご指摘ください。あわせて、次の点をお示しください。会議としてこの事案を候補者の責任を問うものとして扱ったか。協議で、報告書の結論と異なり候補者に責任があるとする意見が述べられたか。述べられた場合、それを会議として確かめる手続があったか。責任があるかどうかという法律上の事柄について、法務担当または弁護士の意見を求めたか。
なお、監事は10月15日付の回答で、「候補者に関係する個別の事案など、事実確認を要する事柄は審議の場では取り上げられていなかった」と述べています。回答書の5と読み合わせると、会議はこの事案についての意見交換を、事実確認のいらないものとして扱ったと読めます。
3.8月18日の判断と、9月28日の判断との整合について
貴会議は8月18日、賛成15・反対0で5名を第2次候補者とし、8月19日に「適任者」として公表されました。ここでは、その時点の判断と9月28日の判断とが、時間の流れの中でどうつながるかをお尋ねします。
(1)8月18日と9月28日の間で、何が変わりましたか。
推薦書と面接は、8月18日の時点で会議の手元にありました。総合研究奨励会の事案は7月10日に公表され、8月の面接で質問され、その上で5名が適任とされています。9月11日の報告は、個人の責任を問う問題ではないとするものです。8月18日より後に会議が新たに知った事実があったのか、それとも既にあった情報に対する評価が変わったのか、そのどちらであったかを私たちは確かめたいと考えています。
何が変わったのか、どんな種類のことか(新しい事実、面接・動画の見直し、協議での意見交換など)をお示しください。新しい事実や材料がなかった場合は、その旨を明らかにしてください。
(2)「第2次候補者を決定するための手順」は、なぜ、どのように改められましたか。
内規第12条第4項に基づき3月13日に定められた手順は、8月10日の会議で改訂が提起され、8月12日から13日の書面審議で改められています。改められた後の手順は公表されていないと承知しています。どこをなぜ改めたのかをお示しください。手順は制度の文書であり、候補者に関わるものではありません。
4.協議と投票を経て、会議として決定するまでの過程について
回答書では「各委員の候補者に対する判断を無記名投票で把握しつつ協議を行い、候補者を絞り込んでいきました」とご説明いただきました。会議の決定が無記名投票の多数によって行われたのであれば、その経過が判断の過程そのものです。ここでは、9月28日の会議の中で、個々の委員の評価がどのような手順と基準で会議の決定に結びついたかをお尋ねします。
(1)各回の投票結果は、どうなっていましたか。
9月28日の各回の投票について、目的、対象となった候補者、候補者ごとの得票数、白票などの数、次の投票に進む条件を、最終の表決の票数とあわせて順にお示しください。各回の投票の間に扱われた主な議題と協議の流れ(第2項(3)でお尋ねした事案に関する意見交換を含む)についても、投票との前後関係が分かる形でお示しください。8月18日に5名を選んだ際の投票についても、同じ形でお示しください。
令和2年度の検証報告書は各回の票数と議論の流れを記していますし、議事要旨も表決の票数を載せています。票数は候補者の弱みに触れるものではなく、前例に照らしても非公開にする理由は乏しいと理解しています。
(2)候補者を絞る条件や、投票を終える条件は、いつ、どのように決めましたか。
実際に用いた条件と、それをいつ決めたかをお示しください。途中で変えた場合は、何をなぜ変えたかをご説明ください。
(3)意向投票と異なる決定をするには何が必要かについて、会議としての考えはありましたか。
貴会議は前年度の協議で、有効投票の過半数を得た者がいる場合は「明確な意向が得られている」と整理されました。回答書でも、意向投票の受け止めについて「長時間にわたり意見交換」し、各委員の評価に「大きな影響」を与えたとされています。その明確な意向と異なる決定をするには何が必要か(どのような事実が、どの程度あれば足りるか)について、会議としての考えがあったかをお示しください。一致した考えを持たず、各委員の判断に委ねた場合は、その旨を明らかにしてください。これは候補者には関わらない、制度についての問いです。
(4)会議として、評価項目に沿った候補者の評価をまとめていましたか。選考理由は、いつ、どのように承認されましたか。
回答書では、意向投票をどの程度反映したかも、最終判断に用いた評価項目も「各委員によって異なると思います」とされています。私たちはこれを、会議として22の評価項目に沿った評価をまとめたのではなく、評価は各委員の判断にとどまり、決定は無記名投票の多数によって行われた、という意味に理解しました。この理解が正しければ、公表された選考理由は、表決の後に整理されたものということになります。
この点は、会議としてまとめた評価があったかどうかという手続の事実で確かめられます。選考理由の下書きがいつ作られ、会議としてその内容に合意し、いつ、どのような方法で確認・承認されたかをお示しください。共通の理由をまとめずに投票で決めた場合は、その旨を明らかにしてください。理解が違っていれば、第1項(1)にお答えいただくことがそのまま訂正になります。
(5)選考理由に書かれていることは、どの評価項目に対応しますか。評価項目にない事柄についての発言はありましたか。
公表された選考理由は「文理融合」「壁を所与と考えない力」などを挙げています。これらが22の評価項目のどれに当たるのか、評価項目にない事柄であれば、9月28日より前に委員の間で共有された基準だったのか、協議の中で新たに使われたものなのかをお示しください。選考理由はまた、「高い倫理観を持って本学の社会的信頼を回復し、強固な運営体制を構築しうる能力を備えていることも重視しなければならない」と述べています。この基準が、総合研究奨励会の事案と結びつけて候補者の評価に使われたかどうかもご説明ください。
また、今回の選考に関して学内外で憶測として語られている事柄を、貴会議ご自身の言葉で整理していただきたい趣旨でお尋ねします。評価項目に含まれない事柄(性別、文系・理系、所属部局、交代の慣行、候補者を選んだ場合の国際卓越研究大学の審査への影響)について、事柄ごとに発言の有無と、あった場合は選考の判断との関係をお示しください。審査への影響については「判断する材料はなく議論は行っていません」とのご回答を承知していますが、議論には至らなくても発言はあったか、会議として執行部に材料の提供を求めたことはあったかをお示しください。
5.候補者に不利益を与えずに示す方法について
候補者に不利益を与えずに示す方法は、あると考えています。協議の中で候補者について何が言われたかではなく、会議が何を決め、何を決めなかったかを示していただければよいのです。第2項から第4項でお願いした事柄は、そのつもりで選びました。票の数、手続があったかどうか、それがいつ、どの順序で行われたかは、いずれも候補者の弱みに関わるものではありません。それでも示すことが難しいと判断される部分があれば、議事要旨を学内限定で公開するといった形で補うことができると思います。
あわせて考えていただきたいのは、理由が示されないこと自体が、候補者に不利益を与えているということです。意向投票で過半数を得た候補者については、総合研究奨励会の事案があったから選ばれなかったのだろう、という見方が学内外に広がっています。もし会議がこの事案をこの候補者の責任を問うものとして扱っていないのであれば、そのことを会議の言葉で述べていただくだけで、この候補者をめぐる憶測の多くは解消されます。
ご回答についてのお願い
(1)各質問に対応する形で、会議として書面でお答えください。
(2)当時の記録に基づく説明、現在の記憶に基づく説明、今回新たに行う検討は区別してください。記録がない事柄、当時検討していなかった事柄は、その旨をお示しいただければ結構です。
(3)開示できない事柄がある場合は、その事柄と理由をお示しください。第5項のような代替の方法が取れるかどうかも、併せてご検討ください。
(4)ご回答は、本書受領から2週間程度を目安にお願いします。時間がかかる項目については、その理由と回答の予定日をお知らせください。
私たちは、委員お一人お一人が重い責任のもとで長時間の協議に臨まれたことを疑っていません。問題にしているのは、個々の委員の判断ではなく、会議としての判断が時間とともにどのように形づくられ、記録され、示されたかという仕組みの側です。判断の過程を明らかにすることと、大学の自治のもとで選考の透明性を高めることは矛盾しません。前者が示されて初めて、後者を学内で議論する土台ができます。
ご回答は賛同者に全文を共有し、監事の調査にも役立つよう、写しを監事にお送りします。本書の受領と要望事項、ご回答の公表は差し支えありません。発起人の氏名は、引き続き学内限りとしてお取り扱いください。
教職員有志発起人一同
02_監事に対する再質問および検証にあたり確認をお願いしたい事項(抜粋)
2026年10月27日
亀井純子監事
山口大介監事
東京大学教職員有志発起人
10月13日付のお伺いに対し、10月15日付で迅速にご回答いただき、ありがとうございました。
総長選考・監察会議に対し、本日付で別添のとおり再質問をお送りしましたので、写しをお届けします。再質問と本書は、賛同者から寄せられた感想と意見をもとに発起人が整理したものであり、特定の候補者を支持するものではありません。会議には、会議としてお答えになれる範囲のこと、すなわち手続があったかどうか、時点、順序、票数をお願いしています。
10月20日に文部科学省から総長と監事に対して依頼のあった検証について、構成員は、会議の説明や執行部の整理とは独立に、監事が記録に直接当たって確認されることを期待しています。
10月15日付のご回答で確認されたのは第12回会議の進行が適正であったことであり、会議としての判断の根拠が記録されているか、協議で述べられた事柄について事実の確認が行われたかは、これからの検証の対象と理解しています。以下に、記録を見なければ確かめられない事柄として、構成員が確認を望んでいる事項(第Ⅰ項)と、適切であったかを判断する基準として考えていただきたい事柄(第Ⅱ項)をお伝えします。
Ⅰ 確認をお願いしたい事項
候補者の課題に関わる内容を含むため、構成員に示していただきたいのは内容そのものではなく、確認した範囲と結果です。確認に当たっては、事務局の要約や説明ではなく原記録に当たること、当時の記録に基づく事実と、委員の現在の記憶や今回新たに行う検討とを区別することをお願いします。
1 候補者の評価の記録
(1)9月28日の協議で、5名それぞれについて、22の評価項目に対応する形で強みと課題が記録されているか。会議としての評価が確定されていなかった場合は、その旨。議長が9月29日の記者会見で選考上重要な要素だったと述べた、国際卓越研究大学構想とガバナンス改革についての各候補者の考え方の評価が、記録にあるか。
(2)公表された選考理由の各記述が、どの評価項目のどのような評価に対応するか。第12回の配付資料3-2「総長予定者の選考に係る資料【非公開】(別冊)」が何から成るか。
(3)過半数の支持を得た候補者と異なる候補者を選ぶに至った主な理由が、記録の上で特定できるか。
(4)評価項目に含まれない事柄(性別、文系・理系、所属部局、交代の慣行、受け答えの態度・印象、候補者を選んだ場合の国際卓越研究大学の審査への影響)について、発言の有無と選考の判断との関係。態度や印象が評価に用いられた場合、どの言動に基づき、どの評価項目との関係で用いられたか。
2 評価のもとになった事実と、その確認
(1)候補者の評価を左右した意見について、会議として確認した事実と、委員個人の推測・解釈との区別が記録の上でつくか。会議として前提となる事実の確認・整理を行わず、各委員の見解に委ねた事柄があるか。
(2)総合研究奨励会の報告書が認定・検討した範囲を超える事実や責任が、意見として述べられていたか。述べられていた場合、報告書の記載との違い。
(3)前提となる事実について、資料との突き合わせ、候補者本人への説明・応答の機会、専門家への照会など、どのような確認がいつ行われたか。確認を不要とした事柄があれば、その理由。
3 8月18日の判断と最終判断との整合
(1)8月18日に5名それぞれを適任者と判断した根拠が記録にあるか。
(2)8月18日より後に得られた新しい事実や評価材料があるか。なければ、既にあった情報に対する評価がいつ、どのような理由で変わったか。
(3)最終段階で判断を分けた事柄を8月18日の時点で把握していた場合、それでも適任者とした理由が記録にあるか。
(4)8月10日に手順の改訂に至った経緯と改訂の内容。改訂前の手順は「上位3名の選出」と「多様性の観点からの追加」を区別していたが、8月18日の決定はその二段階で
行われたか、5名を一括で決めたか。
4 協議と投票を経て会議として決定するまでの過程
(1)8月18日と9月28日の各回の投票について、目的、対象となった候補者、候補者ごとの得票数、白票などの数、最終表決の結果の時系列。各回の投票の間にどの議題が扱われたか(総合研究奨励会の事案についての意見交換を含む)。
(2)候補者を絞る条件、投票を続ける・終える条件を、いつ、どのように決めたか。途中で変更があったか。
(3)各投票の間に何が検討され、どの意見が支持を集めたか。総合研究奨励会の事案についての意見交換の前後で、票の分布がどう動いたか。
(4)公表された選考理由の下書きがいつ作られ、会議としていつ、どのような方法で確認・承認されたか。
5 手続の公正に関する記録
(1)会議の成立と表決。9月28日と8月18日の会議の出席委員数、各回の無記名投票と最終表決の時点での在席委員数、表決の成立要件。議長が無記名投票と表決に加わったか。
(2)投票の管理。無記名投票の投票用紙を誰が配り、誰が集計し、誰が立ち会ったか。集計結果は各回ごとに委員に示されたか。投票用紙と集計記録は保存されているか。
(3)利害関係と回避。委員と候補者との間の利害関係について、申告や回避の定めがあるか。あれば今回どのように運用されたか。
(4)議長の役割。議長が協議の中で候補者の評価について自らの意見を述べたか。述べた場合、議事の整理と区別されていたか。
(5)会議の外との情報のやりとり。会議の構成員以外(執行部、事務局、学外の者)から、委員または議長に対して、候補者に関する情報や意見が伝えられたことがあるか。国際卓越研究大学の審査に関する情報が会議または委員に提供されたことがあるか。あればいずれも記録と、会議での扱い。9月28日の会議より前に、委員の間で候補者の評価について協議や連絡が行われたか。
(6)保秘の範囲。協議の内容のうち保秘とする範囲と、構成員に説明できる範囲の線引きを会議としていつ決めたか。
(7)文書の作成者。第12回配付資料3-2、選考理由の下書き、面接で各候補者に行った質問の案を、それぞれ誰が作成したか。事務局が作成した場合、その内容を議長または委員が事前に確認したか。
(8)候補者への説明。選ばれなかった候補者に対し、選考の結果と理由が個別に説明されたか。あればその時期、方法、説明した者。
(9)議事の記録。第12回会議について、公表される議事要旨とは別に、発言を記録した議事録または録音が作成・保存されているか。議事要旨の案を誰が作成し、委員の確認を経ているか。
Ⅱ 適切であったかを判断する基準
第Ⅰ項の事実を確認した後、それが適切であったかをどの基準で判断するかが、検証の結論を決めます。私たちは、会議や大学が自ら定め、または過去に自ら示した次の五つが基準になると考えています。
(1)内規第16条。考慮事項を「総合的に考慮」して選考すること。会議としての評価がまとめられていて初めて満たされると私たちは考えます。
(2)国立大学法人法第12条第7項および同法施行規則第1条の5第1項第1号。選考の理
由を公表すること。公表された理由が会議の判断の記録であるか、表決の後に整理され
たものであるかで、満たし方が変わります。
(3)令和2年度総長選考過程検証報告書。候補者に不利な情報について、真偽の確認、選考資料としての採否の議論、候補者への提示と反論の機会を求めたこと。
(4)前年度第5回会議での会議自身の整理。有効投票の過半数を得た者がいる場合は「明確な意向が得られている」としたこと。その意向と異なる決定をするには何が必要かを、会議が決めていたかどうか。
(5)3月13日に定めた「第2次候補者を決定するための手順」。適任者の選出は「求められる総長像に合致していることを前提とする」としたこと。8月18日に適任とした判断と9月28日の判断の関係は、この前提に照らして見ることになります。
このうち(3)については、協議の中で述べられた候補者に不利な意見(報告書の結論と異なり候補者に責任があるとするもの、推測や伝聞に基づくものなど)も「事実確認を要する事柄」に当たると私たちは考えています。
お願い
検証の結果は、任命の申出の前に構成員にも示していただきたくお願いします。問題がなかったと判断された場合も、どの記録をどの基準に照らして確認したかを添えてお示しください。本書の受領と内容、ご回答を公表されることは差し支えありません。発起人の氏名は、引き続き学内限りとしてお取り扱いください。
会議の回答書は「意見交換を行った」と述べ、10月15日付のご回答は「事実確認を要する事柄は取り上げられていなかった」と述べています。この二つの関係を記録に基づいて整理していただくことが、会議と構成員の間の信頼を取り戻す近道だと考えています。
教職員有志発起人一同