ロシア軍機の領空侵犯、無線の警告に従わず3回目で空自戦闘機が「フレア」で警告…防衛省が発表
防衛省は23日、露軍の哨戒機「IL38」1機が北海道・礼文島北方の空域で同日午後に計3回、領空を侵犯したと発表した。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、1958年に対領空侵犯措置を開始してから初めて、航空機から強い光と熱を発する「フレア」を使用して警告した。日本政府はロシア政府に厳重に抗議した。
防衛省によると、露軍機は礼文島北方の空域を北から南に繰り返し飛行し、午後1時3分頃から約1分間、領空を侵犯した。その後も飛行を続け、同3時31分頃に約30秒間、同3時42~43分頃にも約1分間、領空侵犯した。
空自はF15、F35戦闘機を出動させ、無線で領空を侵犯しないように再三、通告した。しかし露軍機がこれに従わなかったため、3回目の領空侵犯の時にフレアを使用した。フレアはミサイル攻撃を回避する際などに機体から射出されるもので、強い警告の意思を示すときに用いられる。
露軍機は同5時50分頃、礼文島周辺空域から大陸の方向に飛び去った。
木原防衛相は23日夜、臨時の記者会見を開き、「極めて遺憾で、ロシア政府に対して外交ルートを通じて極めて厳重に抗議した」と語った。
自衛隊は1987年、旧ソ連軍機が沖縄県・沖縄本島の上空や鹿児島県の沖永良部島・徳之島の付近で領空を侵犯した際に、光を発する弾を発射する「信号射撃」を実施した。信号射撃やフレアの使用は領空を侵犯しないように警告するもので、どちらを使うかは、状況に応じて現地部隊が判断する。防衛省は、いずれも武器の使用にはあたらないとしている。
旧ソ連やロシア機(推定を含む)による領空侵犯は今回を含めて44件目。日本周辺では8月下旬に中国軍機による領空侵犯も発生している。
空自機がロシア軍機にフレア発射 対領空侵犯で初 日本政府は強く抗議
防衛省統合幕僚監部は23日、ロシア軍のIL38哨戒機1機が同日、北海道・礼文島付近の領空を3度にわたって侵犯したと発表した。航空自衛隊のF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、赤外線誘導ミサイルなどを攪乱(かくらん)する「フレア(火炎)」を発射した。対領空侵犯措置としてフレアを使用するのは初めて。 【
木原稔防衛相は防衛省で記者団の取材に応じ「極めて遺憾」と述べ、外交ルートを通じてロシアに強く抗議し、再発防止を求めたと説明した。
林芳正官房長官は官邸で記者団に、訪米中の岸田文雄首相から国際法と国内法令に従って冷静かつ毅然(きぜん)と対応するよう指示を受けたと明らかにした。首相は米国をはじめとする関係国との緊密な連携や、国内と国際社会への適切な情報発信も求めた。
政府は官邸の内閣危機管理センターに情報連絡室を設置し、関係省庁で対応に当たった。
防衛省によると、ロシアのIL38哨戒機1機は23日午後1時3~4分ごろ、同3時31分ごろ、同3時42~43分ごろの計3度にわたって領空侵犯した。対応した空自機は無線を通じて呼びかけ、自らの機体を揺らして退去するよう警告を続けた。3度目の侵犯の際に、強い警告の意思を伝えるためにフレアを発射した。防衛省はフレアの発射は武器使用には当たらないとしている。
空自機による対領空侵犯措置では、旧ソ連軍機が昭和62年に沖縄本島や鹿児島県の沖永良部島、徳之島の上空に侵入した際、警告のため信号射撃を行った例がある。
防衛省によると、ロシア機に対する緊急発進回数は令和元年度以降の5年間、中国に次いで2番目に多い。元年度は268件だったが、5年度は174件。今年度は8月までに70件行われた。
ロシア軍機が3回領空侵犯、空自戦闘機は初の「フレア」警告 北海道
防衛省は23日、ロシア軍の哨戒機1機「IL38」が同日午後に3回にわたり、北海道・礼文島の北側で日本領空を侵犯したと発表した。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、光や熱を発する装置「フレア」による警告を初めて実施した。林芳正官房長官は首相官邸で記者団の取材に応じ、「極めて遺憾」と述べ、外交ルートを通じてロシア政府に厳重に抗議し、再発防止を強く求めたことを明かした。
同省によると、ロシア軍機は北海道西側の日本海上空から礼文島北側に飛来し、午後1時3~4分ごろに領空侵犯した。その後、いったん領空外に出たが、同3時31分ごろと、同3時42~43分ごろにも領空侵犯したという。
空自からはF15、F35戦闘機が緊急発進し、無線や機体信号で警告を行い、3度目の侵犯時にフレアで警告した。フレアは通常、敵の赤外線誘導ミサイルから逃れるために戦闘機が射出するもので、領空侵犯に対しては無線などより強く警告の意思を伝える措置だという。
22~23日には中国軍とロシア軍の艦艇計8隻が、北海道北側の宗谷海峡を通過した。木原稔防衛相は「(今回の領空侵犯と)関連している可能性がある」と記者団に語った。 ロシア軍の固定翼機による領空侵犯は2019年6月以来だが、その後もロシア機が領空侵犯を重ねている。
8月26日には中国軍機による日本の領空侵犯が初めて確認されている。(里見稔)
ロシア軍哨戒機が領空侵犯 空自戦闘機、フレアで警告 礼文島北方
ロシア軍機が3回領空侵犯、自衛隊機が初のフレア発射=木原防衛相
[東京 23日 ロイター] - 木原稔防衛相は23日夜、北海道礼文島の北方上空を領空侵犯したロシア軍の哨戒機に対し、緊急発進した航空自衛隊機がフレアを発射して警告したと発表した。自衛隊がこれまで40件以上の領空侵犯措置をしてきた中で、フレアを発射したのは初めて。
木原防衛相によると、同日午後1時台から3時台にかけてロシア軍のIL─38哨戒機1機が3回にわたり領空侵犯した。航空自衛隊はF15、F35戦闘機を緊急発進し、無線で通告と警告をしたほか、3回目の侵犯時にフレアを発射した。
木原防衛相は「状況に鑑みてそのような判断に至った」とフレアを発射した経緯を説明しつつ、「ロシア機による特段危険な行為はない」と述べた。フレアの発射や警告射撃は「われわれが取りうる運用の1つ。いずれにしても躊躇(ちゅうちょ)なく行いたい」と語った。
木原防衛相によると、これまで確認した領空侵犯は今回を入れて48件。旧ソ連時代を含めロシアが44件、中国が3件、台湾が1件だという。8月26日には中国軍の情報収集機が長崎県男女群島沖の上空を侵犯し、航空自衛隊が戦闘機を緊急発進した。
これとは別に、防衛省はロシアと中国の艦艇8隻が23日に宗谷海峡を東へ航行したことを確認。木原防衛相は、「ロシア軍軍機の飛行と中ロ両国の艦艇の航行が関連している可能性も考えられる」と述べた。
木原防衛相は、外交ルートを通じロシア政府に抗議したことを明らかにした。「ロシア軍はウクライナ侵略後もロシア機はわが国周辺での活発な活動を継続している。わが国周辺空域におけるロシアの軍事動向に対し引き続き強い関心を持って注視するとともに、警戒監視に万全を期していきたい」と述べた。
林芳正官房長官は今回の事案を受け、官邸に情報連絡室を設置したことを明らかにしたうえで、今回のロシア軍機の行動の意図、目的については確たることを答えるのは差し控える、としている。