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しばらくかかりそ。サグラダファミリアより遅くなるかも。

我が国水産物輸出に関する取組の現状と課題 報告書より、ホタテ関連の抜粋③

順序的には、これが①になるはずなんですが、情報量的に③にさせてもらいました。

 

我が国水産物輸出に関する取組の現状と課題 報告書
平成29年7月
一般財団法人 東京水産振興会

 

我が国水産物輸出に関する取組の現状と課題 報告書より

 

本調査研究でわかったこと

ホタテガイ、サバ、ブリ類、マグロの輸出金額が増加している。このうち、ホタテガイとブリ類については国内生産量が横ばいの中で輸出量が急増しており、国内生産量に占める輸出量の割合は上昇傾向にある。

ついで、水産物輸出の取組事例として、近年輸出量が急増し、2015 年において品目別輸出金額第 1 位となっている「ホタテガイ」と、(略)「サケ・マス」について、現地調査(対象:漁協、水産加工業者、鮮魚出荷業者)を実施し、輸出量や価格、品質、販売形態、輸出ルート、輸出開始当時の状況、輸出拡大における課題、輸出が国内需給に与える影響等について調査を行った。

 

ホタテガイについては、2012 年以降中国向け加工原料貝需要の急増に対応し、輸出量が増大したが、ホタテガイの生産および流通面において、①養殖生産における斃死率の上昇、②産地加工業界の 2 極化、③国内消費の鈍化、④国内供給と輸出バランスの変化、⑤産地加工処理能力の低下、⑥輸出向け「玉冷」需要の低下等の課題があげられた。こうした課題に対して以下の 6 つの提言を示した。

① 減産原因の究明による安定生産の推進
② 原料貝輸出に対する組織的な規制の導入
③ 高付加価値商品輸出の推進
④ 加工業者に対する経済支援
⑤ 加工業者に対する労働力確保のための支援
⑥ 国内消費回復のための方策

 

 

2 主要品目の輸出動向
2-1 ホタテガイ
(1) 輸出高の動向

ホタテガイの輸出量は、直近 3 ヵ年で急激に伸長し、2013・2014 年には約 5.6 万トン、2015年には約 8 万トンにまで達している。この背景には、特に中国における需要の高まり、円安、海外の生産不振が存在していると考えられる。


一方、輸出単価は下落しており、2005 年と比較すると約 4 割程度となっている。ホタテガイの輸出時の商品形態は、乾貝柱、ボイル冷凍、冷凍貝柱(以下、玉冷)、殻付き冷凍(片貝、両貝)、活貝など多様で、原貝に対する歩留まりも異なる。輸出単価は商品形態によって異なるので、輸出単価の下落は、輸出量全体に対する商品形態別の構成比が変化したためと考えられる。


ホタテガイの輸出量全体の商品形態別構成比は公表統計資料では把握できない。産地関係者からの情報では、近年は「両貝冷凍」の中国向け輸出が大きく進展しており、最近の大きな伸長の主因とのことであった。その半面、「玉冷」や「貝柱」といった従来からの主要な商品は、輸出が減退傾向にあると推察される。


なお、図 1-3 は、ホタテガイ(生・冷蔵・冷凍・塩)のみの値である。「貝柱」は、統計上、「水産物調整品」として扱われているため、その輸出量・金額は、当該データには含まれない。

 

 

(2) 主な輸出先

2005 年の主たる輸出先は、数量、金額ともアメリカであった。しかし 2010~2015 年にかけて、中国、ベトナム向けが大幅に増加。2015 年は、金額ベースでは約 20%と依然アメリカが大きなシェアを示しているが、数量ベースでは、約 80%が中国、ベトナム向けとなっている。2005年は、アメリカ(主に玉冷、ボイル冷凍)、香港、台湾(乾貝柱)が輸出の主流であった。2009年頃から中国向けの両貝冷凍輸出が開始され、急激な伸長を示している。

 

 

(3) 商品形態・荷姿

主な商品形態は、貝柱を凍結した「玉冷」、むき身の「ボイル冷凍」、貝殻が 2 枚付いたまま凍結した「両貝冷凍」、貝殻を 1 枚残しハーフシェルで凍結した「片貝冷凍」、伝統的な「乾貝柱」である。産地関係者によれば、近年は「活貝」での輸出も増加しつつあるとのことであった。「乾貝柱」、「活貝」以外は全て冷凍商品であるが、いずれも IQF ※ で規定の内容量でダンボール箱に梱包された荷姿である。
※IQF(Individual Quick Freezing):個別急速冷凍。なお、ブロック急速冷凍は BQF(Block Quick Freezing)。

 

(4) 最終用途

日本産の乾貝柱製品は国際的にも品質が高く珍重されており、一般家庭向けの小売よりも外食店で使用される場合が多い。また、両貝冷凍や片貝冷凍、活貝は、小売向け、外食店向けと推定される。玉冷、ボイル冷凍も同様で、加工原料への仕向けはなく、末端消費者向けが主流である。

 

 

(5) 主な国内産地

ホタテガイの主な国内産地は、北海道、青森県宮城県岩手県である。特に北海道、青森県の生産量の合計が 90%強を占めている。なお、三陸地域(岩手県宮城県)では、国内の生鮮向けを主な市場としており、輸出に仕向けられることは少ない。


北海道の主なホタテガイ生産は、オホーツク海沿岸の地撒き増殖(天然)と、噴火湾一帯の垂下式養殖に大別される。伝統的に、オホーツク海沿岸では「玉冷」加工が主体である。噴火湾では「ボイル冷凍」加工が主体であったが、近年は、片貝冷凍や両貝冷凍の比率が高まっている。


青森県では陸奥湾での垂下式養殖が主体である。かつては輸出に向けられる割合は北海道ほど大きくはなかったものの、近年は増加傾向にある。

 

 

(6) その他

国内市場よりも高価格で販売できることから(両貝冷凍の FOB 価格は約 250 円/kg で国内産地価格の 2 倍程度)、輸出が大きな販路として定着しつつある。輸出の伸びは、中国、東南アジア向けで支えられている。
FOB(Free On Board):輸出時の荷主の費用負担区分を示す。貨物船に積載するまでの費用を荷主(輸出する側)が負担すること。