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しばらくかかりそ。サグラダファミリアより遅くなるかも。

我が国水産物輸出に関する取組の現状と課題 報告書より、ホタテ関連抜粋②

参考資料

ヒアリングメモ (ホタテガイ)

 

我が国水産物輸出に関する取組の現状と課題 報告書より

 

北海道水産関係者①
日 時: 2016 年 8 月

■ オホーツクでは2014年12月に低気圧被害があり、2015年の水揚量は、前年から大きく減少した。2014年、オホーツク+道東の水揚量は35.9万トンであったが、2015年は23万トンにまで落ち込んだ。オホーツクの地撒き養殖は、4年の輪採制であるため被害は長期間にわたっており、減産傾向は2017年まで続くと予想をしている。


■ 2015年の噴火湾ホタテガイ水揚量は10万トンであったが、2016年は斃死率が高く5万トンまで減産。2017年は3~4万トンまでさらに水揚げが落ち込むと言われている。


噴火湾からの中国への輸出量は、2016年、1万5千トンである。加えて、青森県陸奥湾の半成貝、1万5千トンが両貝冷凍にまわされている。


■ 両貝冷凍は中国で片貝に加工され、ウロ等が除去され、春雨や香草等と一緒に和えられ中華料理として使用される。


■ ウロがついている商品の輸出は、貝毒の問題などが発生する可能性があるため、原料をそのまま凍結させた「両貝冷凍」の輸出は推奨していない。


■ 20年前は100円/kgを切っていたホタテ単価が、10年前には120円になり、今は生産者が「300円のラインを切っては生きていけない」というほどの高騰をみせている。しかしながら、10数年前に起こったサケドレス輸出と同じで、いずれは落ち込みを見せるのではないか。


噴火湾ホタテガイ(2年貝)の多くは両貝冷凍に向けられている。噴火湾の生産量の約30~50%が両貝冷凍に向けられているではないか。


■ 北海道からの中国向けのホタテガイ輸出は、2010年の中国でのホタテ減産を契機として、2011年頃より爆発的に増加している。2014年頃からはベトナム輸出も増加しているが、これらもベトナム経由で中国に再輸出されているようである。2012年の北海道から中国・ベトナムへの輸出量は11,952トン、3,787トンであった。以降も同国輸出は増加傾向が継続し、2015年には52,621トン、8,519トンが輸出されている。


■ 玉冷はオホーツクが主産地だが、従来のアメリカ向け以外に、台湾・ホンコン向けにも輸出されている。また、韓国への活貝も増えており、輸出量は6,000~7,000トン。


■ 2015年の両貝冷凍の平均単価は、300~350円/kg(約3$)となっている。青森県陸奥湾の半成貝・両貝冷凍は300円以下の単価である。


■ オホーツクでのホタテガイ取引は、生産者と買受け業者各々の代表が交渉する「協議値決め」方式。


噴火湾では2010年までは協議値決め方式が採用されていたが、現在は、「入札」方式による販売が増加している。協議値決め方式と入札方式を併用している漁協では、出荷者がどちらで販売するかを選択できるところが多いが、「値決め」で決定された価格が、最低価格の担保となっている場合が多く、価格は入札方式で販売するほうが高いことが多い。


■ 入札方式が採用されたことで、これまで荷割を持たない加工業者がホタテガイの取引に参加するケースが増加した。両貝冷凍は高度な加工技術が必要ではないため、こうした業者も扱うことができる。このため、従来ホタテガイを扱っていた加工業者が高値により入手困難となっているケースを聞いたことがある。


■ 中国輸出においては、水産系商社の仲介により、代金の決済リスク・回収リスクを回避している。これらの業者を介さずに取引した業者からは、代金の焦げつきが発生したケースがあることを聞いたことがある。


■ 従来ボイル加工を行っていた加工業者も両貝冷凍加工を行っている。そのためボイル加工のラインは取り外し、パートさんの雇用も減らしていると聞く。地域雇用の受け皿減少や、産業空洞化につながらないかと懸念をしている。


青森県は、ホタテの産地取引において独自の入札方式を採用している。


留萌管内は、種苗生産地。近年は、ホタテガイ単価の高騰をうけ、韓国向けの活貝出荷にまわされる割合が増加してきた。活貝出荷の中間業者は、地元の加工業者が担っている。


噴火湾での水揚げ時期は通常3~4月(特に4月に集中)であるが、近年水揚げが遅れる傾向がある。水揚げを遅らせることで、2年貝の貝重量は増し、単価も良くなる。しかし、例年であれば少なくとも3月には終わらせる必要がある「種苗入れ」作業・「耳吊り作業」が遅れ気味。水温が上昇する時期にこうした作業を実施することは、貝の成育に影響がある。
さらに近年の高単価によって生産者は、漁場内に生産施設を過密化しているともいわれている。研究者からは、直近2年の高い斃死率は、これらが影響しているとの意見も聞かれる。


■ 加工屋さんの一部では、近年の両貝冷凍輸出ブームは一過性のものにすぎないと認識しており、冷凍両貝は扱わず、意地でもボイル加工を行う姿勢である。対して、冷凍両貝を積極的に行う加工屋さんもあり、両者の考え方は真逆である。


EUでもオホーツクや北海道のブランド化が進み、少し高く売れている。

 

北海道水産関係者②
日 時: 2016 年 8 月

■ 近年のグローバル化の進行と日本のマーケット縮小により、国内だけではホタテを消費しきれない。ホタテの生産量は、かつては50万トン、今は40万トン。そしてかつては日本国内だけが仕向け先であったが、今は消費力が減少し、半分以上は海外マーケットが対象となっている。


■ 輸出の決済に関しては、仲介役として国内の商社に委託を行っている。特に中国への輸出は決済リスク、代金回収リスクがある。


■ ホタテの主力商品は、冷凍両貝、玉冷、ボイル(ウロ取り)、ボイル柱など。ボイル柱はスモークホタテの原料となる。かつてはボイルが主力であり、ピーク時には2,000トン以上を取り扱っていたが、現在はピークの1/10程度である。仕向け先も、国内向けから、徐々に中国、台湾へと移っている。玉冷も同様であり、国内向けから、アメリカ、中国、台湾へとシフトしている。


■ 現在は冷凍両貝が主力。5年前から扱っており、そのきっかけは中国のイタヤガイ養殖場での大量斃死。その際に、中国の加工場から、イタヤガイの代替品としてエゾホタテを噴火湾から輸入して、フランス向けの貝柱を製造したい旨の連絡がきた。


■ 冷凍両貝の製造に際して、在庫は持たないようにしている。加工の手間はかからない分、利幅はとれない。薄利多売型の商品。冷蔵庫は従来の施設を使っているが、貯蔵庫には量が必要となる。原料の仕入先は、噴火湾だけではなく、オホーツク、青森といった全国の主だったホタテ産地である。産地の異なる仲の良い加工業者間で連絡を取り合い、お互いに原料を調達している。産地によって主な水揚げの時期が異なるため、連絡を取り合うメリットがある。


■ 5年前から去年まで続いた冷凍両貝輸出の状態は、今後も持続するとは限らないと考えている。現在、人手を使ってホタテガイを選別して冷凍を行うことや、中国で行う片貝加工を事前に行うなど、「付加価値」化をした商品の製造・出荷を考えている。


■ 近年、韓国や中国、香港向けの「活貝」需要が高まっている。これらの国では、ホタテを生で食べる文化が根付きつつあり、特に北海道産のホタテを評価してくれる。現状では、1,000トン未満のホタテは活でエアレーションをかけて出荷をしている。海外からの品質面に対するクレームはない。


■ 中国の加工場は、日本だけではなくペルーからもホタテ原貝を輸入している。しかし北海道産の品質が良いとされている。理由は、適正なサイズであり、また大きな卵がついていること。中国では卵つきホタテガイが好まれ、商品価値が高く、卵がついているかいないかで価格が大きく変わる。噴火湾で生産されるホタテガイは2から5月にかけて卵が大きくなり、5月の後半になるとホタテは放卵を行う。


■ 近年の冷凍両貝輸出ブームにのって、従来はサケ、イワシイカなどを扱っている加工業者が、新規参入者として冷凍両貝加工に参画をしてきた。これらの業者は、扱っている魚種の特性上、凍結能力・施設をもっており、また両貝冷凍はスチーマーを持っていない業者でも扱うことができるため、参入が容易であった。さらにホタテガイの水揚げは2~5月であり、サケやイカのシーズンの端境期であったこともホタテへの参入を後押しした。しかしながら、これらの新規参入者は徐々に淘汰をされている。


■ 価格の高騰により国内需要は低下している。スーパーに向けられるような値段ではないため、国内向けの主力は外食産業用。直接販売と市場出荷が半々。ウロ取りボイルは、弁当屋さん、BBQや鍋用の商材としての需要があり、玉冷は回転寿司用の商材として仕向けている。価格の高騰により、玉冷はスライスして1/2で寿司一貫分にするなど工夫されている。しかしながら、国内でホタテ商品はなかなか捌けない状況。


噴火湾に入札方式の導入により、生産者はホタテガイの品質に鋭敏になり、歩留まりの上昇、付着物の除去など、品質面の向上に効果がある。

 



北海道水産関係者③
日 時: 2016 年 8 月

■ 中国をはじめとする輸出ブームが予想に反して長期間続いていることにより、生産者の意識は「いずれ価格は落ち込むだろう」から「この価格があたりまえ」の状況になっている。

価格が400円/kgを超えると輸出には不利だと言われていたが、この1年は420~430円でも輸出は好調である。ただし、単価が良い状況は好ましいが、今の状況が必ずしも良いとは考えていない。


■ ホタテ養殖業では、外国人受け入れの実習制度を利用して、中国人、インドネシア人が作業に携わっている。年間の作業工程で出荷(朝)と耳吊り作業(昼)の時期が重複する時期が作業労働負荷のピークである。特に集落から遠い漁場を持っている経営体は重労働である。


■ 5、6月以降の耳吊り作業は、既に水温が高くなっている時期であり、貝の成長に著しく悪影響を与える可能性がある。耳吊り時期を遅らせないように、3月中旬以降から人を大量に投入して1ヶ月以内に終わらせる経営体もみられる。

 

水産関係者④
日 時: 2016年10月

■ オホーツクのホタテは地まき方式で生産されるが、地まきのホタテは砂を噛んでいることから、ウロやヒモをとった「玉冷」あるいは「干貝柱」が主な商品形態。


■ かつては、ホタテの国内マーケットは17,000トン、輸出は5,000トンといわれていたが、去年は国内が7,000トン、輸出は10,000トンという状況。


ベトナムにも「両貝冷凍」が一定量輸出されているが、これらのほとんどは中国に流れている。香港・台湾への輸出は「玉冷」が主力で、現地では和食商材として供されている。
フランスも「玉冷」が主力、特に卵つきの商材が好まれる。ただしフランスでは、最近、水漬けされた玉冷も流通している。


■ 一般的にヨーロッパでは生ホタテを食べる文化は根付いておらず、グラタンなどに調理され消費されている。オーストラリアも同様に玉冷、卵つきが主力であるが、オーストラリアでは「水漬け文化」が根付いており、品質は良くない。アメリカも玉冷が主力。こちらも水漬けされた日本産ホタテが大量に流通している。


アメリカではホタテ養殖は行われておらず、全てが漁業生産による天然貝である。近年は漁獲管理(漁獲量の規制)が行われており、2016年で導入3年目を迎える。2014年の漁獲量は2.5万トン、2015年は1.5~1.7万トン、2016年は2.3~2.5万トンであった。


アメリカでは加工場で水漬けされ、1.5倍ぐらいまで水増しされたものがスーパーなどで販売されている。日本産の良質なホタテ(玉冷)も輸出された後、その約9割が水増し加工されアメリカ国内に流通する。


■ しかしながら、日本産ホタテの品質的な評価を下げるこうした使われ方は問題視している。今後は、もっと日本産の良い商材を現地に提供したいと考えている。


■ 日本から中国へ輸出された両貝冷凍ホタテが中国国内で消費される量は少なく、中国内の加工場で水漬けし膨らませた商品が、アメリカやオーストラリア、台湾へ再輸出されている。2015年までは、ヨーロッパは中国からの輸入を禁止していたことから、中国からヨーロッパへの再輸出は行われていなかったが、2016年からは中国からヨーロッパへ再輸出が開始されている。


■ 中国への両貝冷凍の輸出は、中国でホタテが大量斃死したため、同国内の加工業者が加工原料の確保を日本に求めたことから始まった。対してイタヤガイは安定的に生産されていた。中国でのホタテ大量斃死の原因は、近親交配が進んだことによるホタテガイの環境に対する脆弱化であるといった意見もある。


■ 日本におけるホタテ中国輸出のパイオニアは、北海道の水産会社で2009年ごろから中国へ輸出を行っている。


■ 近年、ホタテ輸出を精力的に行っている業者は福島県の水産商社や東京の水産商社である。

 

■ 干貝柱の輸出先は香港が中心。干貝柱はオホーツク沿海の漁業協同組合の委託事業で生産されている。干貝柱の価格は生産者と商社による協議値決めで決められる。


■ 中国への輸出は、他の輸出相手に比べてカントリーリスクがある。中国への両貝冷凍輸出は、過去の中国向けのサケドレス輸出と似ており、同じようなリスクを持っている。サケ輸出が盛んだったころ、日本の会社と中国の会社が合弁化するケースが多かったが、商売においては中国商人が上手である。


■ 2016年は北海道の減産により価格が高騰したことから、中国への両貝冷凍をはじめとするホタテガイ輸出は減少が予想されたが、青森県が増産であったことから、輸出量自体は大きく落ち込むことはなかった。噴火湾からの輸出減少分を青森県産がカバーした状態。噴火湾から2万トン、青森県から3万トンが輸出された。青森産のホタテガイ噴火湾産に比べて小型であるが、昨年度は成長が良く、中国の要求するサイズをクリアしていたようである。


■ 青森では、陸奥湾で5年ほど前にホタテ大量斃死が発生。これにより加工業者では加工原貝が不足し、廃業が相次いだ。しかしここ2年ほどで県内生産量が回復した。県内の処理能力が十分でないことから、噴火湾の加工業者に原貝が流れている。北海道と青森の間では1日に何台ものトラックが津軽海峡を往来し、青森県産のホタテが買い付けられ北海道に運送されている。


青森県ホタテガイは特有の入札方式で販売されているが、近年は生産者の力が強く加工業者は原料調達に苦慮している。噴火湾やオホーツクの加工業者は、青森県の業者を通じて原料を仕入れている。

 

■ 2015年の北海道・噴火湾ホタテガイ生産量は約10万トンであったが、2016年は5.2万トン、2017年は3.0万トンまで減産すると言われている。2016年8月に起こった台風の大きな被害によりさらなる減産も予想される。またオホーツクでは、来年までは減産が続く。全体としてしばらくは供給不足が継続し、価格の高騰が予想される。


■ 生産者の経営状況がよい一方で、加工業者の経営は厳しい状況が続いている。原料高に加えて、製品価格の高騰により国内のマーケットは縮小。両貝冷凍の輸出は増大しているとはいえ、薄利多売であり決してもうかる仕組みにはなっていない。特に今年は、「原料不足」、「国内マーケット縮小」、「浜値高騰」、「為替問題」など複数の要因が重なり、厳しい経営を強いられている加工業者が多いのではないか。


■ 2004年頃、玉冷の製品価格は350円/kgにまで下落した。その頃の浜値は60円/kgであった。噴火湾のホタテ生産量は20万トンほどあったが、低価格を背景に、スーパーなど量販店の棚に平積みされ、国内に消費力があった。かつての噴火湾産ボイルホタテは、スーパー商材としての消費がメインであり、業務筋では鍋用商材やBBQ商材、釜飯用商材として販売されていた。


■ 輸出に対する今後の展望については、「なるようにしかならない」というのが感想。「両貝冷凍」については、日本の加工業者が中国の下請け的な立場におかれ、良い環境とは言えない。行政主導で方向転換を図るべきと考える。生産者・加工業者を含めて、輸出に対する規制 (輸出量の制限など)などルールづくりが必要。


■ ヨーロッパでは、一般的に品質に対する消費者の意識が高く、値段が高くても良いものを提供すれば購入・消費をしてくれる。今後は、こうした地域へ高品質なホタテの輸出を増やしていくべきである。


水産関係者⑤
日 時: 2016年10月

■ 今年8月に発生した台風被害により、噴火湾ホタテガイ養殖業は大打撃を受けた。1.2~1.3万トンを予定していた次年度の生産量は、9,000トン程度にまで減少する見込み。


■ 来期の北海道のホタテ生産量は、噴火湾が約3万トン、オホーツクが約10万トンと大幅な減産が予想されている。オホーツク北部の宗谷、猿払、枝幸の生産量はそれほど大きな減産にはならないが。


■ 昨年度以降、オホーツクの加工業者は、原貝不足による製品価格の高騰をうけ、「玉冷」の輸出量は激減している。2016年の夏前は、国内マーケットも荷動きが悪く、玉冷の在庫がダブつく状況にあった。そのためオホーツク地域では原料貝価格を300円から270~280円に下げている。国内マーケットについては、価格高騰により量販店需要が減少している。

回転寿司等の外食需要はやや減少がみられるものの、一定の需要は確保されている。


■ 2000年頃は100円/kgを下回っていたオホーツクの原貝の価格は270~280円/kgまで上昇している。


■ 中国においてホタテ加工原料の産地を問われることはほとんどない。青森産もオホーツク産も同等に扱われている。


ホタテガイ「玉冷」の輸出単価は3,000~3,500円/kgであり、他魚種にくらべても圧倒的に高い。そしてコンテナ単位で輸出されており、輸出量も圧倒的に多い。現在、そのホタテガイ輸出が激減していることから、輸出目標を達成できない状況。農産物を含めても、ホタテガイの代替商材はみつけることは難しい。


■ 近年のホタテ輸出の伸びは、為替が円安になったことが背景にある。ここ数年で為替は80円から120円と5割も動いている。来期以降は減産傾向が明らかであるため、国内に向けて販売しようとする動きがある。


ホタテガイの原料供給は減少傾向にあるが、単価が高いため、生産者の経営は決して悪くない。一方、加工業者の経営は大変厳しい状況にある。加工原料が入手できないだけでなく、特に設備投資、労働力問題など課題が山積している。


青森県では、加工業者が100トンほどのホタテガイEUへ輸出したようである。オホーツクでの加工業者は玉冷製品を対米向けに輸出していることから、ほとんどの加工場が対米HACCPを取得している。この対米HACCPは厚生労働省が認定している。


EU輸出の主力は玉冷製品である。玉冷製品は100%可食なうえ、和洋中と全ての料理に使うことができる。ホタテガイは欧米でも生産されているが、養殖物としては日本のホタテの品質がトップでありブランド力を持っている。


水産物の輸出増大については、ホタテガイ生産量の回復が最優先課題。為替が110円程度になると自然に輸出は伸長する。国内市場を縮小させないこともまた重要と考える。サケ、ホタテが国際商品になってしまった今日では、これらは国外へ輸出をせざるを得ない状況でもある。そのため、原料輸出でなく、高次加工品輸出を検討すべきと考えている。

 

水産関係者⑥
日 時: 2016年11月

■ 2014年末にオホーツク海を襲った爆弾低気圧の影響を受け、網走、紋別、猿払などオホーツク沿岸域のホタテ生産量は、向こう4年間の減産を余儀なくされた。その生産量が回復するのは2018年だと見込まれている。加えて、今年8月に発生した台風被害により、噴火湾ホタテガイ養殖業は大打撃を受けた。


■ 3~4年前まではオホーツク沿岸域では歩留まりのよいホタテが大量に生産され、昨年までは全道の加工業者は在庫を抱えて輸出も積極的に行ってきた。しかしながら、2016年以降は、北海道からのホタテ輸出量は減少するであろう。一方、別海や標津など、道東地域のホタテ生産量は比較的安定して推移をしている。


■ オホーツク地域では、ホタテガイの原料供給は減少傾向にある、生産者の経営状況は決して悪くない。一方、加工業者の経営は大変厳しい状況。生産量が少なく、加工原料が確保できない。そのため、北海道の加工業者は、近年生産量が回復してきた陸奥湾からトラックで原貝を運んでいる。北海道では、生産者と加工業者の間で、生産と加工のバランスが崩れつつある状況となっている。


三陸ホタテは、生鮮出荷主体であり、海外輸出はなく、ほとんどが築地に出荷をされている。


水産物の輸出は、あくまでもビジネスで行われてきた。HACCP認定を受けたからといって、全ての業者が輸出を行っているわけではない。その方針は経営者の考えによって様々である。リスクをとって輸出を行ってきた加工業者もいれば、あくまでも国内販売を優先し余裕があれば輸出を行うスタンスの加工業者もいる。


■ 現在の輸出促進策は、生産者や加工サイドからみた観点が強い。「輸出促進」を進めるのであれば、生産者や加工場だけに補助をするというよりも、実際に輸出を行っている人たちへの税を、5%、10%と割り引くような優遇措置もあってもよいであろう。


■ 加工・販売者の観点からすると、現状の輸出は、海外に原料・半製品出しを行っているような状況。それらの原料・半製品は相手国内で再加工され、再輸出されるような状況である。例えばオホーツク海産の玉冷製品が中国輸出され、中国で水漬け加工し、アメリカへ再輸出されるなどである。中国の庶民がホタテガイを刺身で食べる所得を有しているわけではない。


■ 今後は、日本国内でできるだけ水産物に付加価値をつけて、海外に輸出を行っていく展開はとれないものか。もともと「農林水産振興」の方針が、近年「輸出促進」にシフトしてきた。輸出はあくまでも「ビジネス」であり、例えばたまたま為替が良かったとか、生産量がたまたま増大したなど、その時々の時流や環境に沿った形で伸縮をみせるという側面もある。ホタテであればオホーツクの地撒き生産がたまたま良くて中国への輸出が伸びたとか、サバであればたまたま卓越年級群が形成されて小型のサバが大量に漁獲されて各国への輸出が伸びたとか、養殖ブリであればアメリカでちょうど寿司ブームがあったなどである。国内の「農林水産振興」をどうするのか。国内に水産物を販売するとなると、一般消費者に魚食普及をどうするのかという課題にもつながる。

 

北海道水産関係者⑦
日 時: 2016年12月

■ 現在も従来通りの協議値決め方式を採用している。その理由は既存の加工業者への販売を優先するため。これら加工業者には、過去にホタテが安かった際も、買い支えてもらった経緯がある。生産と加工の関係は、あくまでも共存共栄の関係でありたい。

 

■ 今年度のホタテ水揚量は、例年に比べて3割の減少となる予定。減少の理由は、今夏に起こった台風の影響よりも斃死の影響が大きい。台風によるホタテ落下は、3.11の津波による落下に比べても少なかった。斃死の原因は、色々な点が挙げられているが、現時点では判明していない。色々な要因が複合的に絡み合った結果だと思う。

 

■ 中国では大連の沖でホタテ養殖が行われていた。大連沖は静穏性は高く潮がはやいことが特徴的である。そのため噴火湾ではホタテは2年で9cmまで育つのに対して、大連では2年で4~5cmにまでしか育たない。加えて斃死が起こったこともあり、中国の水産加工業者が加工場を稼働させるために、商社を通じて日本のホタテを購入したことが近年のホタテ輸出の背景にある。中国へ輸出された日本のホタテは、富裕層に消費されることもあるが、主に再加工され、EUアメリカへ再輸出されている。中国からEUへ輸出されていることから、中国の加工場はEUHACCP認定を持っているのであろう。

 

■ 近年、冷凍両貝がベトナム向けに輸出され、また現地で加工され、中国へ再輸出されるルートも増えてきたと聞く。主要な輸出対象国は、中国、アメリカ、オーストラリア、ベトナムである。

 

■ 今年度の中国向け輸出は、浜値が高く、原料が少ないことから、多くは動かなくなったという印象。8月以降は為替が円安傾向になったにも関わらず、輸出は少なく、中国・アメリカ向けは動いていない。ボルチモアバンクーバーのホタテ天然漁場では、今年度、資源回復を目的とした禁漁期間が終わるため、来年の生産回復が見込まれている。日本の浜値が高く、また来年はアメリカで増産となることが予想されるため、商社は現状では買い控えているような状況。

 

■ 大手商社は玉冷製品を買い集め、しっかりしている中国のバイヤーへ輸出を行う。しかしながら中にはギャング的なバイヤーもおり、日本の生産地にまで出向いてきて商品を買い集める。特にナマコが典型的な商品であり、去年までは輸出が旺盛に行われてきた。ギャング的バイヤーは、1回目は先払いを行いしっかりとしたイメージを生産地に持たせるが、2回目、3回目と輸出が続くうちに未払いとなるケースもきかれる。

 

■ グローバルにみれば、ホタテガイは、フランス、アメリカ、カナダ、チリなど、世界的に生産されている。しかし、フランスでは1週間、アメリカでは1日かけて操業が行われ、水揚げ時点で鮮度は悪い。日本のホタテガイは世界的にみて極めて鮮度が高いが、こうした点が評価されているとはいいがたい。

 

■ 国内市場においては、生、玉冷、ウロ取り生など多様な商品形態において高い需要があった。しかし近年は、国内に仕向けられる量は確実に減少している。寿司ネタなど、必要とされる分は国内に向けて販売はされているが、注文を受けないと作らないといった状況もみられる。

 

■ 日本では生食が行われ、特に小さいホタテが好まれる傾向にあるのに対して、アメリカでは、大きな玉冷が好まれる。

 

■ ホタテ生産時期は、陸奥湾噴火湾、オホーツクのそれぞれで異なる。多くの加工業者は、他産地の加工業者(その地域の買参権を持つ協力業者)から原料の買い付けを行っている。
このような協力関係は、昭和60年代には既に構築されていたようである。

 

北海道水産関係者⑧
日 時: 2016年12月

■ ホタテ斃死の原因については、様々な意見があるが、現時点では解明できていない。夏場の高水温(表層温度22~23℃)を指摘する人もいるが、噴火湾陸奥湾に比べて水深があり、吊縄を深場に移動させる対策をとることができるため、関係ないのではないかと思う。
また付着物の問題や、過密養殖を指摘する声もある。しかし過密養殖は、2006年に対策を採っており、現在は昔に比べると過密の度合いは減少していると考えている。実際は、いろいろと言われている原因が複合的に絡み合って斃死が起こっているのであろう。

 

噴火湾産ホタテは耳吊り生産であるため砂を噛んでおらず、もともとボイル加工が主体であった。対して、オホーツクは4~5年の輪採性で生産されており、砂を噛んでいるためボイル加工は行われず、玉冷が主体であった。近頃、為替が円安傾向に向かっているが、玉冷製品はアメリカに流れていないと聞いている。原料の調達に関しては、オホーツク、噴火湾、青森の間で、加工業者の協力体制がある。

 

■ 中国向けの冷凍両貝は、水産加工会社からすると、利幅がとれない加工品。大手加工会社からは、国内向けには、鍋用のボイル商材や、寿司ネタ商材には一定量の需要があるが、家庭内需要に対応するスーパーでは需要が激減している。