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東京五輪でバス不足のおそれ 学校行事などに影響も

東京五輪でバス不足のおそれ 学校行事などに影響も

2018年10月27日 18時38分

東京オリンピックで選手など関係者を運ぶバスが不足するおそれがあるとして、組織委員会は、文部科学省スポーツ庁に対し学校行事の時期をずらすなどの協力が得られるよう周知を求めていたことがわかりました。これを受けて全国の教育委員会などにはすでに協力を要請する文書が送られていて、学校現場からは戸惑いの声が上がっています。

東京オリンピックパラリンピック組織委員会は、大会期間中には選手や競技役員、メディアなど観客を除く大会関係者がおよそ7万人訪れ、競技会場などに運ぶのに大型の貸し切りバスだけでも1日当たり最大で2000台程度が必要になると試算しています。

ところが、東京バス協会に加盟のバス会社が所有する貸し切りの大型バスは合わせて1400台ほどと不足しているうえ、この時期は毎年、林間学校などの学校行事が多い繁忙期にあたり、バスの確保が大きな課題となっています。

こうした中、組織委員会は、文部科学省スポーツ庁に対し再来年の7月18日から8月10日までの間、バス利用を伴う部活動やサークル活動の合宿、林間学校といった行事の実施時期をずらすなどの協力を、学校などから得られるよう周知を求めたということです。

これを受けて文部科学省スポーツ庁は、ことし7月、各都道府県の教育委員会や全国の各大学などに対し、協力を要請する文書を送ったということです。

全国の学校現場ではすでに学校行事や部活動の合宿などの実施時期の見直しを検討する動きも出始めていて、戸惑いの声が上がっています。

NHKの取材に対し、組織委員会は「教育関係者によるバスの予約と競合するおそれがあり、状況を事前にお知らせしたいと考えた。無理のない範囲で対応を検討してほしい。また、大会期間中は都内を中心にふだん以上の交通混雑も予想される。今回の要請についてご理解をいただきたい」と話しています。

また、今回の要請について担当しているスポーツ庁オリンピック・パラリンピック課は「教育関連の行事をずらすことなどを強要するものではない。バスが不足するという状況をお知らせすることで検討を進めてほしいと考えた」としています。

要請の文書 その内容は
都道府県の教育委員会などに宛てられた要請の文書は、文部科学省スポーツ庁、それに文化庁の連名の「事務連絡」で、ことし7月31日付けとなっています。

「2020年東京大会の開催におけるご理解・ご協力について」というタイトルで、「東京オリンピックパラリンピック競技大会の成功に向けてバス需要の調整及び交通混雑の回避の課題があり、これに対して政府・東京都・組織委員会三者連携して経済界への協力要請も含め様々な検討を行っているところであります。オールジャパンでこれらの問題に取り組むにあたり是非ともご趣旨をご理解いただけますようお願いします」としています。

また、添付された組織委員会の文書では、「安全かつ円滑な輸送サービスを提供することはホスト国である我が国の責務であり、東京大会の成功には、その確実な遂行が必要不可欠となっています」としています。

そのうえで、大会関係者を運ぶバスの調達について「東京都内のみならず、関東、東北や中部、近畿など幅広い地域のバス事業者の協力を得る必要がありますが、東京大会の開催時期である夏から初秋の期間は、観光などレジャーやスポーツイベントの開催などに伴う観光バスの高稼働時期となることから、バス不足などが懸念されています。また大会期間中は交通需要の集中により、交通の混雑及びそれに伴う交通規制の実施が不可避となり、特に都内では円滑な交通に支障を来たすおそれがあります」と説明しています。

さらに、この文書ではこうした課題について、「経済界への要請も含め大会輸送と経済活動の両立を実現するための、交通行動の見直し機運の醸成に係る具体的施策の検討が進められているところです」としたうえで、「このようなオールジャパンで行っていく対策の1つとして、教育関係者の皆様に対しても、大会期間中のバス不足や交通混雑が生じる実情についてご理解頂くと共に、バスの利用を伴う教育関連イベントの実施時期をずらすなどのご協力をお願いしたい」としています。

そして、2020年の東京大会時にバス需要がひっ迫する期間としてオリンピックの開会式や閉会式を含む7月18日(土)から8月10日(月)までとされ、教育関係機関に協力を求めたい事項として「部活やサークル活動などの夏期合宿の実施時期の調整」と「林間・臨海学校、修学旅行や遠足などの教育関連旅行の時期の調整」を挙げています。

影響 品川区の小学校では

都内の多くの自治体では、林間学校や臨海学校の実施時期が東京オリンピックの開催時期と重なるため、学校行事の時期の見直しなどの検討を迫られています。

このうち、品川区では、毎年この時期に小学5年生を対象に37校のほとんどが林間学校を行っています。

今回の要請を受けて、再来年の林間学校の実施時期の見直しについて検討を迫られていますが、対応に苦慮しています。

品川区ではほとんどの学校がバスを利用し、2泊3日で栃木県日光市にある区の宿泊施設に行っています。

このためオリンピックやお盆の時期を避けて、林間学校を8月中旬以降に一斉に実施するのは、日光市にある区の施設の受け入れに限界があるため難しいということです。

区によりますと、ことしは、区内の小学5年生全体の、およそ6割にあたる1460人がオリンピックの年にバスの需要がひっ迫するとされる期間に日光市での林間学校に参加したということです。

一方、こうした状況に区内の小学校からも困惑の声が上がっています。

このうち、区立御殿山小学校では毎年、この時期に林間学校を行っていて、ことしも小学5年生のほぼ全員、76人が参加してハイキングやキャンプファイアーなどを楽しみました。

この学校では授業日数などの確保のため、一部を土曜日にも行っていて、夏休み以外の授業のある時期に林間学校を行うと、授業日数の確保ができなくなるおそれがあるということです。

勝進亮次校長は「2年後だけ林間学校を行わないのは、児童があまりにもかわいそうだ。子どもたちにもいい体験になるのでどうにか実施したい」と話しています。

品川区教育委員会学務課の篠田英夫課長は「オリンピックの影響がこういうところにも及ぶということで、少し驚くと同時に悩ましく感じている。バス需要がいちばんの課題なので林間学校にどれぐらいのバスが使えるのかできるだけ早めに情報をほしい」と話しています。

大阪でも見直しの動き

東京オリンピックの大会会場から離れた大阪でも、今回の要請を受けて、部活動の夏の合宿の時期や場所を見直す高校が出ています。

大阪・堺市の泉陽高校では、例年、夏休みに10以上の部活が合宿を行っていて、ことしは、滋賀県愛媛県などで合宿をした9つの部活が貸し切りバスを使いました。

各部活の合宿は例年、7月下旬から8月中旬までに行われていますが、この時期は組織委員会が示すバス需要のひっ迫する期間と重なっています。

このため、泉陽高校ではすべての部活で夏の合宿を見直すことにしていて、バスを使わないよう近隣の施設で合宿を行うなどの対応を検討しています。

しかし、すべての部活で新たな合宿の施設を確保できる見通しはたっておらず、日程的にも夏休みの補講やお盆の時期を避ける必要があるため、再来年は夏の合宿を中止せざるをえないおそれもあるということです。

これについて各部の顧問からも戸惑いの声があがっています。

このうち、バドミントン部は8月中旬の大阪府の大会に向け、毎年7月下旬に鳥取県で3泊4日の合宿を行っています。

合宿では生徒が集中して練習に打ち込めるうえ、部員どうしの結束も強まることから、顧問の大住陽一先生は合宿の中止は避けたいと考えています。

大住先生は「生徒にとって合宿は大事な役割を果たしているイベントなので何とか再来年も実施したい」と話しています。

武田温代校長は、「関西からも協力して五輪を成功させたいという気持ちはありますが、3年間しかない高校生活の中の合宿なので、どちらを優先させるか判断はとても難しい」と話しています。
バス不足とは
今回の要請の背景には東京オリンピックの期間中、都内のバス会社が保有する貸し切りバスだけでは必要な台数を賄いきれないという事情があります。

組織委員会は過去の大会を参考に、東京オリンピックでは選手や競技役員、メディアなどの大会関係者を運ぶのに、大型の貸し切りバスだけで1日当たり最大で2000台が必要になると試算しています。

組織委員会は安全面などを考慮して日本バス協会に所属するバス会社を利用することにしていますが、都内にはこうしたバスは合わせて1400台しかありません。

しかも、東京バス協会が大会期間中にあたる7月下旬から8月上旬までの過去3年間の稼働率を調べたところ、夏休みの旅行シーズンであることに加え、夏の甲子園や林間学校などの時期とも重なりおよそ8割にあたる1100台前後が稼働していたということで、再来年も同じような状況になるとオリンピックの選手らの輸送にはおよそ300台しか充てることができない計算になります。

また、日本バス協会によりますと、地域差はあるものの全国的に見ても旅行や学校関連の行事などでこの時期はバスの稼働率が高い稼ぎ時になっている会社が多いということです。

こうした中、組織委員会は都内のバス会社だけでは必要な台数を確保できないとして関東を中心に幅広い地域からバスを集める必要があるとしています。

一方、組織委員会は、大会の細かな競技スケジュールや選手ら大会関係者の人数がまだ最終的に決まっておらず、1日最大2000台の大型の貸し切りバスが必要だという試算についてもまだ流動的な要素があるとしています。

組織委員会は、現在、関東や中部、近畿のバス会社に大会期間中に何台のバスを出すことができるのか、調査を進めていて来年の夏以降、バス会社との契約を始めたいとしています。

バス会社 運転手不足の実態は

再来年の東京オリンピックパラリンピックに向けて、都内のバス会社では、選手などを運ぶバスをどれくらい出せるのか検討を始めていますが、運転手不足などのため、難しい判断を迫られている会社もあります。

このうち、東京・足立区の貸し切りバスの運行会社、「東京ワーナー観光」は、18台のバスを保有し20人の運転手がいます。

この会社には東京オリンピックパラリンピックの際に選手など大会関係者を輸送するバスを何台出せるのか、すでに旅行会社から問い合わせが来ています。

ことし4月の時点では、「大型と中型の合わせて5台」と回答をしましたが、その後、「さらに出せないか」という連絡があり、現在、検討を進めています。

会社では、多くのバスを出して、地元・東京で開催される大会を支えたいと考える一方で、簡単には台数を増やせない事情もあり、難しい判断を迫られています。

バス業界は慢性的な運転手不足で、この会社も18台のバスをフル稼働させるためにはさらに5人ほどの運転手が必要だということです。

また、オリンピックの開催時期は、夏休み中の旅行などで1年の中でも特に忙しい「稼ぎ時」にあたる一方で、今回、選手らのバス輸送について、料金や業務量が示されておらず、収入面での不安も大きいといいます。

東京ワーナー観光の渡辺広光社長は「5台より多くのバスを出すと、毎年、バスを使っている人にも迷惑がかかり、その後の仕事の依頼がなくなるかもしれない。料金などを含めて早く示してほしい」と話しています。

専門家「丁寧に説明を」
オリンピックなどスポーツイベントの運営に詳しい早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦教授は、「文書を見て少し唐突感があると感じた。必要なバスの台数を弾き出すなど協力を求めるためのデータが大事で、丁寧に教育関係者への説明会を繰り返し行ってから要請するべきだった。子どもたちを犠牲にしないために今後はデータをもとに綿密な計画を立てていくことが重要だと思います」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181027/k10011688561000.html